新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の働き方変革が加速しています。
従業員を異業種に出向させる「雇用シェア」の取り組みが相次ぐほか、週休の拡大や、副業容認といった動きも活発化しています。
雇用のあり方が大きく転換
テレワークによるオフィスに縛られない働き方は、プロセスや職場環境だけでなく、成果を重視する評価方式の導入拡大にもつながっており、こうした動きは雇用の在り方そのものを大きく転換させる可能性も秘めています。
ある飲食店では、コロナ禍で来店客が大きく減ったものの、同店舗のスタッフが外食の宅配サービスを手がける出前館の配達員として働けるよう契約しているため、結果としてスタッフに仕事があって助かると話しています。
多くの有名企業が余剰人員を他社で活用
出前館では、来店客が減少した飲食店などの余剰人員を業務委託により配達員として稼働させる取り組みを進めています。
多くの飲食店がこうした「雇用シェア」の形態での委託契約を結んでおり、業績が悪化した飲食店などが雇用を維持しながら人件費を緩和できるため、コロナ禍で活用が広がっています。
他の大手企業の事例をみても、例えば大手航空会社のANAホールディングスがグループ社員を家電量販店などに出向させることを発表したほか、外食産業大手のワタミは、従業員を他事業者に派遣する目的で人材派遣会社を設立しています。
政府も支援の動き
政府も今月から、こうした企業の雇用シェアの動きを支援するため、産業雇用安定助成金の運用を開始しました。
賃金や教育訓練費といった運営経費、また必要となる新たな就業規則や機器の整備などにかかる初期経費について、出向元と出向先の双方に助成するものです。
今年1月からの出向者が対象で、遡(さかのぼ)って支給されます。
みずほやキリン、ヤフーや日立、NECでも
こうした働き方の変化は、雇用シェアだけではありません。
金融大手のみずほフィナンシャルグループは、グループ6社で希望する正社員に対し、週休3日または4日を認めています。
また副業の活用も進んでおり、キリンHDでは主要子会社の6千人対して他社での勤務を一部制限付きで解禁しています。
IT大手のヤフーでは、新サービスの企画を担当する人材を外部の副業人材から募集しています。
日立製作所は新年度からジョブ型を本格化させます。デジタル人材採用コースを設け、今年の4月には数十人が第1期生として入社し、給与は新卒の段階から能力に応じて個別に評価されます。
NECでも、令和3年度入社の新卒者から高度な専門領域でジョブ型の採用を始めています。
まとめ
ここ数年における経済の不確実性から、働き方の見直し機運は醸成されていましたが、コロナ禍でいやおうなくジョブ型雇用の流れが加速しています。
特定の職務にふさわしい人材を社内外から充当するジョブ型雇用の拡大について、今後も注視していきたいものです。
参照:産経新聞