「地方移住」より「多拠点生活」が効果的なワケ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、人々の活動が制限され、新しい出会いや交流という機能が奪われています。

仕事や勉強など、あらゆる生活環境がオンライン化されることで、住居を一定の場所に固定するという概念が覆(くつがえ)される可能性もあります。

多拠点生活の進展

オンライン化や副業の拡大などによって、働く場所の制約から開放されると、人々の生活はどうなるのでしょうか。

テレワークだけで働けるようになった人々の中には、都心から離れて広い部屋や自然環境を求めて地方に移住する動きもあります。その一方、都市部で暮らす利便性も大きな魅力です。

地方と都市のどちらも自由に選択もできる生活が「多拠点生活」という概念です。例えば、東京に4ヶ月、沖縄に4ヶ月、そして八ヶ岳の麓に4ヶ月生活して、都会と海と山を一年間で満喫するような生活を指します。

全国の空き家での多拠点生活を支援

こうした、将来に向けて起こる変化により、多拠点生活の裾野が劇的に広がる可能性があります。

ADDress社では、同社の会員になると、全国の空き家に住んで多拠点生活を満喫できるためのサービスを提供しています。

同社では、毎月わずか4万円という低価格のサブスク型サービスで、多拠点生活を支援しています。
参照:ADDress

このサービスを活用すれば、一部の富裕層でなくても日本中を自由に移動しながら住むことが可能となります。

また、空き家は今後も激増することが予想されており、住居空間として供給される家も増大するとみられます。

大手航空会社も便乗

一方、多拠点生活に際しては移動に掛かるコストが気になるところですが、航空大手のANAがADDress社とと提携し、月3万円で2便から4便の航空券を提供するサービスの実験を行っています。

ANAはコロナ禍前からこの業務提携を行っていましたが、コロナ禍での航空需要激減の中で、多拠点生活市場の成長にかける期待も大きいようです。

多拠点生活は移住よりも効果的?

人々が移動することは、日本経済全体にとっても重要なテーマです。

移動によって様々な経済活動が発生し、経済が活性化するとともに、地方創生にも貢献します。

人口減少や過疎化に悩む地方にとっては移住政策がとても大事ですが、魅力的な価値に欠ける地域では、移住のハードルはとても高いのが現状です。

これに対して、本格的な移住でなくても、一時的にでも滞在してくれる人を増やすことで、人々は移住よりも関係を持つ人を増やすという「関係人口」が増えます。

例えば、1ヶ月でも訪れて働いてくれるような関係人口を増やすことは、移住者を増やすことよりもはるかに簡単で、また経済効果も高いです。

今後、住民税を自分が関連して住んでいる場所に分割して納めるような政策が実現されれば、更に新しい地方創生の姿も視野に入ってきます。

参照:Newsweek日本版