働き方改革やニューノーマル社会の進展に伴い、社員の副業を認める企業が相次いでいます。
こうした副業解禁の動きは、大手企業を中心に業種を問わず拡大していますが、その一方、副業制度の設計や運用のあり方も課題となっています。
大手企業の副業事例
ダイドーグループでは、昨年9月にグループ在籍の社員約2,300人を対象として副業制度を導入し、現在約40人の社員が副業で多様な仕事に就いています。
同社では、この制度の趣旨について、社員の柔軟な働き方を実現し、副業を通じて多様な価値観やスキル、知見を身につけることを支援するためとしています。
その他の大手企業でも、みずほフィナンシャルグループやキリンHD、全日本空輸などが副業を解禁しています。
コロナ禍による業績悪化で従業員の年収が平均約3割も減った全日空では、これまで家庭教師など、個人事業主の形に限って認めていた社員の副業を、今後は他社との雇用契約を結んで進めることを可能としています。
また、第一生命HDは今年4月から、営業職を除く約1万5千人の社員を対象に副業を認めることを公表しています。
過半数が副業に興味
オフィス用品通販業のカウネットが実施した副業に関するアンケートによれば、回答者1,278人のうち、副業していないが興味あると答えた人は全体の過半数(56.2%)に上っています。
なお、既に副業をしている人は全体の1割強(13.8%)で、副業にかける時間は1週間当たり平均7.6時間、収入は1ヶ月当たり6万1,134円となっています。
副業を始めた理由については、副収入を得るためが56.3%と最も多かった一方、本業では得られない経験をしたい(30.7%)、スキルアップのため(22.2%)など、将来のスキルやキャリアアップに向けた自己投資を目的とする場合も多い状況でした。
副業マッチングサービスも
企業の副業解禁に伴い、新たなビジネスも生まれています。
文具大手のコクヨは、テレワークや副業の需要をオフィス家具の購入につなげるため、一般住宅でも使いやすい家具やインテリア用品を集めた個人向け通販サイトを開設しました。対象商品を増やし、現在は約4,500点を展開中で、今年1月の販売点数は前月比で約3倍に伸びています。
また、転職サービスのリキャリアは、副業情報サイト運営を通じて、副業を始めたい人と副業人材を求める企業などをマッチングするサービスを開始しました。
こうした副業マッチングサービスは拡大しており、その需要は都市部だけでなく地方にも広がるとみられています。
本音では副業を歓迎しない企業も
注目される副業拡大の動きですが、その一方、課題やデメリットもまだ多い状況です。
副業解禁に伴い、企業は社員からの外部への各種情報漏洩や、社員の健康被害といった新たなリスクと向き合うことになります。こうした状況から、本音ではまだまだ副業を歓迎しない企業も多数あるのが実態です。
まだ企業にとって課題も多い状況のため、今後は副業の利点を最大限に活かす制度の設計・運用が求められます。