新型コロナウイルスの感染拡大は、一都三県での緊急事態宣言が解除された後も止まらない状況下です。
こうした状況下、厚生労働省はこのたび、テレワークを導入する際の注意点をまとめた新たなガイドラインを策定し、全国の労働局に通知しました。
厚労省 テレワーク新指針を通知
この指針によれば、企業の人事評価に関して、リアル出勤者だけを高評価したり、また在宅勤務中に時間外のメールを見ないといった理由で低評価したりするのは不適切だと明示しています。
また、新入社員や転職直後の社員は業務に不慣れなため、コミュニケーションが取れるよう配慮を求めています。
この背景としては、新型コロナウイルス感染拡大でテレワークが普及したことが挙げられます。
今回の指針に罰則はありませんが、労働基準法や労働安全衛生法などの規定に即して整理されており、守らない場合は違法となる可能性があります。
新指針の骨子
今回の指針では、対象となる従業員や業務を、非正規労働者だけテレワークから除外するといった区別を禁止しています。また、出勤者にだけ仕事を多く割り振るなどの業務の偏りにも注意を促しています。
さらに、通常は管理職と従業員の勤務場所がそれぞれ異なるため、労働時間の把握はパソコンの起動時間や従業員の自己申告といった簡易な手法でも良いこととされています。
在宅勤務では仕事と私生活が曖昧になりがちで、長時間労働も懸念されます。そのため、職場からの連絡ルールや休日などに働ける上限時間を事前に労使間で取り決めておくことも推奨しています。
ガイドラインの概要
今回厚労省が公表したガイドラインの概要は下記のとおりです。
1 趣旨
テレワークのメリットについて、労働者にとっても会社にとってもそれぞれ有効であると評価しています。その上で、今後の良質なテレワークの導入・推進について示したものです。
2 テレワークの形態
テレワークの形態はを以下のように分類しています。
① 在宅勤務
通勤が必要ないため、通勤に必要なる時間を柔軟に活用できる形態
② サテライトオフィス勤務
自宅の近くや通勤途中の場所等に設けられたサテライトオフィス(シェアオフィス、コワーキングスペースなど)での勤務形態
③ モバイル勤務
労働者が自由に働く場所を選択できる、外勤における移動時間を利用できる等、働く場所を柔軟にすることで業務の効率化を図ることが可能な働き方
3 テレワークの導入に際しての留意点
テレワーク導入に際する留意点を次のように規定しています。
(1) テレワークの推進に当たって
テレワークの推進は、労使双方にとってプラスなものとなるよう、働き方改革の推進の観点にも配意して行うことが有益としています。
(2) テレワークの対象業務
一般にテレワークを実施することが難しいと考えられる業種・職種であっても個別の業務によっては実施できる場合があるため、管理職側の意識を変えることが望ましいとしています。
(3) テレワークの対象者等
実際にテレワークを実施するに当たっては、労働者本人の納得の上で対応を図る必要があり、それぞれの業務形態にかかわらず幅広く対象とするよう規定しています。
(4) 導入に当たっての望ましい取組
テレワークの推進に当たっては、以下のような取組を行うことが望ましいとしています。
- 既存業務の見直し、点検
- 円滑なコミュニケーション
- グループ企業単位等での実施の検討
4 労務管理上の留意点
労務管理上の留意点については下記のとおりです。
(1) テレワークにおける人事評価制度
テレワークは、企業がその手法を工夫して、適切に実施することが基本であるとしています。
(2) テレワークに要する費用負担の取扱い
テレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくないため、労使のどちらがどのように負担するか検討するよう求めています。
(3) テレワーク状況下における人材育成
テレワークを推進する上で、社内教育等についてもオンラインで実施するなど、有効施策を提示しています。
(4) テレワークを効果的に実施するための人材育成
企業は、各労働者が自律的に業務を遂行できるよう、仕事の進め方の工夫や社内教育等によって人材の育成に取り組むことが望ましいとしています。
5 テレワークのルールの策定と周知
運用ルールについては、主に次の項目が必要な旨記載されています。
- 労働基準関係法令の適用
- 就業規則の整備
- 労働条件の明示
- 労働条件の変更
6 様々な労働時間制度の活用
今回の指針で得られる労働時間の活用について述べています。
(1) 労働基準法に定められた様々な労働時間制度
テレワークを実施しやすくするために労働時間制度を変更する場合には、各々の制度の導入要件に合わせて変更することが可能です。
(2) 労働時間の柔軟な取扱い
下記それぞれについて記載しています。
- 通常の労働時間制度及び変形労働時間制
- フレックスタイム制
- 事業場外みなし労働時間制
7 テレワークにおける労働時間管理の工夫
労働時間の管理について工夫すべき指針を示しています。
(1) テレワークにおける労働時間管理の考え方
(2) テレワークにおける労働時間の把握
客観的な記録による把握
① 労働者がテレワークに使用する情報通信機器の使用時間の記録等により、労働時間を把握すること
② 使用者が労働者の入退場の記録を把握することができるサテライトオフィスでテレワークを行う場合には、入退場の記録等により労働時間を把握すること
イ 労働者の自己申告による把握
① 労働者に対して労働時間の実態を記録し、適正に自己申告を行うこと
② 労働者からの自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか補正・確認すること
③ 労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと
(3) 労働時間制度ごとの留意点
(4) テレワークに特有の事象の取扱い
ア 中抜け時間
イ 勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間
ウ 休憩時間の取扱い
エ 時間外・休日労働の労働時間管理
オ 長時間労働対策
労働時間延長防止対策
(ア) メール送付の抑制等
(イ) システムへのアクセス制限
(ウ) 時間外・休日・所定外深夜労働についての手続
(エ) 長時間労働等を行う労働者への注意喚起
(オ) その他:勤務間インターバル制度はテレワークにおいても長時間労働を抑制するための手段の一つとして考えられること
8 テレワークにおける安全衛生の確保
安全衛生に関するガイドラインは下記のとおりです。
- 安全衛生関係法令の適用
- 自宅等でテレワークを行う際のメンタルヘルス対策の留意点
- 自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備の留意点
- 事業者が実施すべき管理に関する事項
また、下記についても示しています。