新型コロナウイルスの感染拡大は一向に収束せず、多くの企業が新卒採用を見送り、また採用人数を大幅に縮小しています。
特に大きな影響を受けている観光業や運輸業などであり、更に旅行業界では、トップのJTBをはじめ、HISや近畿日本ツーリストも来年度の新卒採用中止を発表しています。
就職氷河期の再来
航空業界では、ANAは毎年約3000人前後採用してきた新卒を21年度入社は600人程度の採用に抑え、22年度は更に大幅縮小して200人程度を予定しています。
JALでは22年度の新卒採用を見送りました。
JRと私鉄大手主要18社は全社が21年3月期決算で最終赤字となり、新卒採用を縮小する方向です。
観光や輸送、また飲食などの「コロナ直撃」業種以外でも、21年度の新卒採用を抑制しており、過去10年上昇基調が続いていた新卒大学生の就職内定率は大幅に悪化しました。
22年度も引き続き、新卒採用の抑制が見込まれており、コロナ禍による就職氷河期到来が指摘されています。
売り手市場にはならない?
一方、今後コロナ禍が収束して企業の採用マインドが復活した際に、新卒マーケットが以前のように売り手市場となるのは難しいようです。
その理由として、会社の業務を代替するアウトソーシングが充実してきたことが挙げられます。
クラウドソーシング型企業を活用すれば、企業が必要とする業務や職務に適合した人材をどこからでもマッチングして調達できる時代です。
日本特有の人事雇用制度である、新卒社員を一括採用するシステムは、終身雇用や年功序列制度が崩壊する中で、徐々に問題視されつつあります。
在宅勤務が新たな弊害
コロナ禍でテレワークが推進されたことにより、アウトソーシング化が加速しています。
オンライン会議システムを活用し、社員をフルタイムで在宅勤務させるよりも能力の高いエキスパートに時間単位で業務を委託した方が効率的で、仕事のパフォーマンスも向上するという判断をする企業も増えています。
テレワークに加え、AI(人工知能)やRPA(ソフトウェア型ロボットによる業務自動化)も普及しつつあり、正社員の採用を減らしてアウトソーシングを進める企業が今後も増えていくとみられます。
日本特有の人事システムによる企業の低迷
年功序列を中心とする日本特有の人事システムは、日本企業の経営力の低迷を招いています。
その一方、外資系大手コンサル企業は、新卒学生に対してコンサルタントによる問題解決の手法を教え、プロジェクトを任す手法で事業を拡大し、今では人気業種となっています。
また、創業者である江副浩正氏が唱えた「32歳定年説」を実践するリクルートだったり、藤田晋氏が創業したサイバーエージェントのように、新卒1年目から社長になって、戦略以外に人事・財務など、経営に必要な幅広いノウハウを実践的に身にける企業もあります。
これに対して、日本の伝統的な企業は、若手・中堅社員は上司の資料作りばかりさせられ、経営に参画するのは入社20~30年後です。
こうしたシステムの日本企業が業績を低迷させるのは必然です。
まとめ
日本企業は、従来の人事制度を抜本的に見直し、優秀な人材を世界中から採用し、急速にインキュベートするシステムを実行に移すことが求められます。