キャッシュレス決済サービスを利用して給与を支給する「デジタル給与」の解禁へ向けて、関心が高まっています。
デジタル給与とは、給与を従来のように銀行口座に振り込むのではなく、PayPayやLINEペイなどの、スマホアプリにチャージされる仕込みです。
デジタル給与提供者へ求められる資格要件
今回の制度導入を推進した厚労省は、サービス提供事業者に対して、次の要件を求めています。
- 債務履行が困難になった場合に、保証の仕組みを設ける
- 不正取引で損失が生じたときには補償する
- 1円単位で引き出せ、月1回は手数料なしで換金できる
- 財務状況を厚労相に報告できる
- 業務遂行の裏づけとなる技術的能力がある
ちなみに、登録済みの事業者は現時点で約80社となっています。
利用者の期待と条件
この制度に対して、若い年齢層を中心に利用への関心が高まっているようです。
公正取引委員会が実施したアンケート調査によれば、PayPayをはじめとするノンバンク系決済サービス利用者の約4割が、デジタル給与の導入を期待しています。
また、日本資金決済業協会の調査でも、過去3年以内にノンバンク系の送金サービスを利用した利用者のうち、約2割がデジタル給与を利用したい意向を示したとしています。
デジタル給与に対する期待の背景としては、利用者が自分で電子マネーにチャージする手間が省け、給与を受け取る時期や回数を選択できるなど、労働者(給与受給者)側にとってもデジタル給与でのメリットが大きいことが挙げられます。
全体的な傾向としては、20代を中心とする若年層での利用意向が高く、女性よりも男性の方が意欲的に捉えているようです。特に、20代男性の利用意向は約40%にも上っています。
今後、政府が主導する働き方改革などを追い風に、副業の解禁が進み、多くの企業が追随すれば、複数の支払先からの支払い期日を統一するなど、更に柔軟な利用方法の普及が期待されます。
課題はセキュリティ
取り組みが進んで今後の拡大が期待されるデジタル給与ですが、その一方、課題も指摘されています。
昨年に発覚した、NTTドコモの「ドコモ口座」を使った預貯金の不正引き出しなど、アカウント乗っ取りといった不正に加え、個人情報の漏洩防止にも注意する必要があります。
安心してこの制度を運用するためには、事務処理の見直しや、ITシステム化の堅牢化などの対応も必要となります。
日本全体での給与総額は約280兆円ともいわれます。万一の制度破綻を招かないよう、万全な対策を検討すると同時に、労働者保護の観点からも、しっかりとした議論が必要です。
参照:日経BizGate