「デジタル給与払い」の意外な落とし穴

スマホなどでの「デジタル給与払い」が今年中にも解禁される動きがあるようです。

若者や外国人、海外赴任者などに多くのメリットがある反面、中高年を中心に戸惑いや反発も予想されます。

中高年戸惑いや反対も

安倍政権以来、キャッシュレス社会を目指す動きが加速しており、スマホ決済アプリに給与を入金するこの方針が、早ければ今年度中にも制度化されるといいます。

これに対して、反対や懸念の声も多く寄せられています。特に、中高年を中心にこうした反発が多いようです。

中高年といっても、多くの利用者はクレジットカードや交通系ICカードなど、PayPayやLINE PayといったQRコード決済サービスも使いこなしています。

それでも聞こえる大きな反発の声があります。

デジタル給与払いのメリット

今回の制度が解禁されても、それが義務化されるわけではなく、給与受給者は、従来どおり銀行振り込みや現金渡しを選択することも可能です。

日本ではまだまだ現金信奉が根強い文化・風土があり、多くの人が現金で商品を購入しています。

今回の制度で恩恵を受ける層は、学生や外国人、海外赴任者などです。学生や外国人などは銀行口座が持ちにくく、手軽に利用できるスマホ決済は便利で、外国人の場合は母国への送金も行いやすいメリットがあります。また、海外赴任者も、赴任先でそのまま使える決済サービスを利用することで通貨交換の手間が省けて便利です。

また、スマホ決済サービスによって、給与を払う側の企業が振込手数料を削減でき、日払いや週払いなど、短期間での給与振込も柔軟に対応できるメリットも挙げられています。

さらに、新型コロナウイルス感染防止の観点からも、非接触のスマホ決済サービスは予防上のメリットがあるといわれています。

新たな詐欺被害も

特に中高年が注意しなければならないのが、不正利用の問題とされています。若者よりはデジタルに不慣れな人が多い中高年にとって、大きな不安要素です。

スマホを利用したアカウント乗っ取りやアプリの不具合、偽造QRコードの不正アクセスなどが懸念されます。不正利用に当たっての保障制度もありますが、100%安全というわけではありません。

「振り込み」「中高年」というキーワードから、過去のオレオレ詐欺や振り込め詐欺などの特殊詐欺が連想されます。詐欺を行う側も新たな詐欺手口を考案します。こうした懸念は払拭されないでしょう。

活用する2つの条件

デジタル給与払いが中高年にも受け入れられるための条件として、①スマホ決済サービスにおける現金引き出しの機能充実と、②使用可能場所の拡大の2点が挙げられています。

現金引き出しの機能充実

スマホ決済サービスの現金引き出しは、主管である厚労相が示した条件により「支払日当日にATMで1円単位の現金化を可能にする」とされています。

ところが、現在では現金化できるのはセブンイレブンのATMだけで、硬貨が扱えません。こうした現状をどう改善していくかが大きなポイントです。

使用可能場所の拡大

スマホ決済サービスで商品やサービスを購入できる場所の拡大も大きな課題です。

例えば飲食系でいえばサイゼリヤなど、スマホ決済サービスに対応をはじめたチェーンも増えています。納税や公共料金についても、スマホ決済を進めています。

このように、実際には既に多くの支払いがスマホ決済サービスで可能であり、生活上の不便は改善されつつありますが、まだ完全とはいえません。

まとめ

キャッシュレスの対応は、ここ数年でかなり進んでいます。

これまで現金清算に馴染んだ中高年にはまだしっくりこない状況でもありますが、スマホ決済サービスの様々な課題を解決しながら、将来へ向けて徐々に浸透していくとみられます。

参照:ビジネス+IT