加速する「都心離れ」で伸びる移転支援サービスに注目

コロナ禍でオフィス移転が加速

新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってテレワークの導入が進む中、コスト削減のためにオフィスの移転や縮小を検討するベンチャー・中小企業が増加しています。

具体例をいくつか挙げれば、ロボット開発のQBITロボティクス社は本社を千代田区から中野区に移転し、オフィス面積を約半分としました。

また通信系ベンチャーのソラコムもテレワークが定着し、オフィス面積を3分の1まで縮小します。

事実、東京を中心とする都心のオフィスは空室率(*)が上昇しており、これに対応する形でオフィス移転や縮小を薦めるサービスも相次いで登場している状況です。
(*)貸室の面積中の空き空間割合

課題はオフィス賃料

政府や各自治体によるコロナ禍での緊急事態宣言などをきっかけに、多くの企業が感染防止対策としてテレワークの推進へとかじを切りました。

東京商工会議所の調査によれば、テレワークを実施した企業の割合は今年3月で26.0%だったものが、5月下旬~6月上旬には67.3%にまで上昇しています。

こうした状況下、大きな課題として浮上したのが賃料コストのかかるオフィスの問題です。

従来からも、企業が生産性を高める上で不要なスペースを見直す動きはありましたが、新型コロナ禍でその流れは加速しました。

オフィス空室率も上昇

不動産仲介会社の三鬼商事が東京都心を対象に調査した結果、本年9月末時点におけるオフィス平均空室率は前月から0.36ポイント上昇し、3.43%となりました。

コロナ禍以前は、都心への拠点集約や事務所拡張の需要が高まったことで本年2月末時点では過去最低の1.49%を記録しましたが、コロナ発生以降は7カ月連続で悪化し、3年半ぶりの高水準となっています。

平均賃料も本年8月末には6年8カ月ぶりに下落し、9月末も3.3平方メートル当たり2万2733円(前月比0.4%減)と、2カ月連続で下落しています。

移転支援サービスが拡大

一方、こうした現状と課題を商機と捉えたビジネスも広がりを見せています。

企業の出来店を総合的にプロデュースするアクトプロ社(本社:東京都千代田区)は、現在のオフィスから退去を希望する企業と、新たに出店場所を探す企業とを結び付けるサービスを提供しています。

同社はこのマッチング事業を昨年5月に始めましたが、今年の3月以降に問い合わせが殺到し、2月まで平均月60件前後だった新規会員数が5月だけで約1100件にまで跳ね上がっています。

また、月額500円から家具を貸し出すサービスを提供しているサブスクライフ社(本社:東京都渋谷区)でも、家具関連の注文や問い合わせが新型コロナ流行前の3倍にまで上昇しています。

こうしたビジネスの拡大は、コロナ禍での環境変化による新たなニーズに対する受け皿としても期待されており、今後の動向と市場からの評価が注目されます。

参照:アクトプロ サブスクライフ