「座りっぱなし」がもたらす健康リスク、1時間に5分は休憩を

「座りっぱなし」状態が増加

世の中の生活が様々に便利になったことで、現代人は体をこまめに動かす機会が減っています。さらに、新型コロナウイルスの影響で外出が減り、テレワークの導入が急速に進んだ結果、自宅で座りっぱなしで過ごす時間がどんどん増えています。

こうした不活発な時間の増加による健康状態の悪化が、今後じわじわと進むのではないかと懸念されています。事実、テレワークでデスクに長時間座りっぱなしの状態が続くと、さまざまな病気のリスクを高め、死亡リスクまで上昇すると言われています。

死亡リスクが高まる「座りっぱなし」

近年の研究から、椅子に座って作業をしたりソファに寝転んでじっとしている、いわゆる「座りっぱなし」の時間が長くなればなるほど死亡リスクが高まり、様々な疾病(*1)を引き起こすことが明らかになっています。
(*1)肥満、糖尿病、心疾患、脳卒中、がん、うつ病、認知機能の衰えなど

その理由として、長時間座っていることで下肢の筋肉が使われず、代謝機能の悪化や血流の低下、更には血圧の上昇を招くことなどが挙げられています。

運動で取り戻すのは大変

平日に仕事で座りっぱなしの時間が長くても、週末の運動で取り返せばよいと思いがちですが、そう簡単ではありません。

カウチポテト(*2)という表現があります。
(*2)カウチ(長椅子)に座りっぱなしで、ポテトチップスを食べながらテレビやスマホでダラダラ過ごす人

また、週末に運動してアクティブに過ごしながら、その他の時間は座りっぱなしで過ごす人たちのことを「アクティブ・カウチポテト」と呼びます。

こうした人たちは、自分は週末にしっかり運動しているから大丈夫と安心してしまい、運動以外の時間はほとんど動かず、座りっぱなしで過ごしています。しかし近年、こうした人たちでも死亡リスクが増加することが判明しています。

中強度の運動が最も効果的

座りっぱなしによる死亡リスクを運動によって軽減させるためには、中強度の身体活動を1日60~75分行うのが効果的という研究結果(*3)があります。
(*3)座位行動に関する複数の研究を統合し、100万人を超える男女のデータを解析し2016年に米国で公表されたもの

この研究によれば、運動強度の単位である「メッツ」と「時間」を掛け合わせた「メッツ・時(MET-h)」が週に35.5以上のグループのみが死亡リスクを回避しています。この数値は、早歩きのウォーキングを毎日1時間以上行う程度の運動量に相当します。

座りっぱなしの時間を短くする工夫を

こうした運動を習慣付けられる人は健康上の問題をクリアできそうですが、忙しい現代人にとっては、これだけの運動量を日々確保することはかなり困難です。

となれば、やはり座りっぱなしの時間を少しでも短くする方が、簡単かつ確実に実行できる健康法と言えるでしょう。座りっぱなしを減らずには、まず「長時間座っていることは体に良くない」と強く意識することが大切です。

何かに熱中していても、長く座りっぱなしだと感じたら、少し立って歩くよう工夫することが大切です。目安としては、30分ごとに3分程度、あるいは1時間に5分程度のブレイク(中断)を目標にします。

その際、立つだけでは十分に筋肉が動かないため、少し歩いたり軽くスクワットをしたりして、下半身の大きな筋肉に刺激を入れるのがポイントとなります。

参照:日経Gooday