コロナ禍で宿泊施設は大打撃
新型コロナウイルスの感染拡大により、外国からの観光客が激減しています。また、国内での外出自粛の動きも重なり、観光地やビジネス街の宿泊施設は大きな打撃を受けています。
その一方、GOTOトラベルによって国内の観光客は戻りつつある状況です。こうした状況下でこのたび、観光庁が民泊に関する調査を実施しました。
民泊の廃止届が増加
2018年にいわゆる「民泊新法」が施行されて以降、住宅宿泊事業者は届け出をすれば民泊を営めるようになりました。
その結果、住宅宿泊事業の届出は2020年10月時点で2万7484件と、法施行日の約12.4倍にまで増加しました。
その一方、事業の廃止件数は新型コロナウイルスの感染拡大のころから増加し、届出住宅数は4月10日の調査数をピークに減少傾向にあります。2020年10月時点で事業廃止件数は7292件に達し、届出住宅数は2万192件となっています。
収益が見込めない状況
観光庁が事業の廃止理由について調査したところ、廃止の理由で最も多かったのは「収益が見込めないため」(49.1%)で、前年調査(7.2%)より大幅に増加しています。
収益が見込めない理由は宿泊客の減少です。観光客の減少に加え、出張の抑制なども影響して開店休業状態になったところも多いようです。
「事業は完全に廃業」という回答が増えていることからも、収益が見込めずに完全に撤退する状況が浮かび上がっています。
他の用途への転用に活路
一方で、何らかの形で事業を継続しようという動きもうかがえます。旅館業または特区民泊などへの転用を検討している動きが注目されます。
こうした動きはコロナの影響もあって増加していることから、民泊新法による民泊ではなく、特区民泊や旅館業などの業態で事業を継続しようという動きが確認されました。
新たな業態で事業継続を
民泊新法が施行される前は、旅館業(簡易宿所)を営むか、認定された自治体による民泊(いわゆる特区民泊)という選択肢しかありませんでした。
旅館業法や特区民泊の運営ハードルを下げるために、一般の住宅でも事業可能として登場したのが民泊新法です。
ただし、旅館業や賃貸業を脅かさないため、民泊では年間180日を超える営業はできないという制限がつきました。この制限から脱皮し、365日営業可能な旅行業や特区民泊への転用が検討されている状況です。
コロナ禍にあってもGOTOトラベルなどで観光客が戻ってきた地域であれば、いつでも営業できるようにしたいとの想いが感じられます。
コロナ禍での環境変化
コロナ禍で生活様式は著しく変化しました。テレワークが急速に拡大する中で、民泊用の住宅をコワーキングスペースにしたり、家具付きのマンスリー賃貸にしたりといった、業態を転換する動きもあると考えられます。
コロナ禍で民泊事業自体を完全に止めた場合が多い一方、何らかの形で事業を継続しようという事例も見受けられます。
せっかく日本に根付いた民泊ビジネスは、日本らしい「おもてなしの場」として育つため、今後も知恵を絞って、何とか継続していただきたいものです。
参照:観光庁