テレワークで生産性は…若手「上がった」、ベテラン「下がった」 評価が分かれるのはなぜ?

テレワークで分かれる年代別の評価

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業はテレワーク・リモートワークを推進し、政府もこうしたワークスタイルを要請する状況となっています。

こうした状況下、テレワークの導入による生産性の評価について調査・分析した結果がリリースされました。

それによれば、テレワークの導入によって、若い世代は生産性が上がったと考えている一方、40代以上の中堅社員層は逆に生産性が下がったと考えていることが明らかとなりました。その理由について解説していきます。

39歳以下は半数近くが生産性向上

今回この調査を実施したのは、日経BP総合研究所イノベーションICTラボです。

まず、テレワークの導入によって生産性が上がったと回答した人(従来の生産性指数を100とした場合、100~120以上と回答)の割合は、39歳以下では45.7%となった一方、40歳代では24.1%、50歳以上は19.4%と、年齢が上がるにつれて著しく低下しました。

逆に、生産性が下がったと回答した人の割合は年齢が上がるにつれて上昇しています。このことから、若手社員はテレワークによって生産性が上がったと考え、逆にベテラン社員は生産性が下がったと考えていると判断できます。

ITリテラシーの違い

日本では、年齢が上がるにつれてITリテラシーが低下するというのが常識的な概念となっていますが、諸外国では必ずしもそうとは言い切れません。

OECDの調査によれば、年齢が上がるとITスキルが低下するという傾向自体はどの国にも共通の現象ですが、特に日本人の場合は、ITを活用した問題解決能力・スキルが高年齢において特に顕著という結果が示されています。

この要因は様々に分析されていますが、そのひとつとしてリカレント教育(生涯学習)の不足が指摘されています。

日本の場合、他国と違ってまだ多くの企業(特に大手を中心)では年功序列で転職が少ない雇用環境が維持されており、経験を積んだ後に継続的に新しい知識を習得する風土がありません。

このため、年齢が上がるほど組織や部下の管理などに軸足が移り、新しい知見を持たず、結果としてITのスキルも低下するという流れとなっています。

シニア世代の意識向上も

その一方、今回の調査では注目すべきポイントも見受けられました。年齢が上がるにつれて生産性は低下していますが、60歳以上については、生産性が上がったと回答した人の比率が少しだけ上昇していることです。

60歳以上で生産性が上がったと回答している人は、経営者や経営幹部など、上級管理職である可能性が高いとみられます。

年功序列の日本企業で、競争に勝ち抜いて企業の幹部に上り詰めた人は、独学でITなどの新しい知見を身につけている可能性が高く、こうした層はテレワークにも迅速に対応していると推測されます。

この仮説が証明されれば、ITリテラシーは単なる年齢ではなく、本人の意識と能力次第という結果が導き出されるでしょう。

参照:日系XTECH