「非正規だからテレワーク対象外」はNG 指針改定へ

厚労省が非正規社員のテレワークを保護

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの企業がテレワークや在宅勤務を推奨していますが、政府もこうした動きを積極的に支援しています。

コロナ禍で浸透しているテレワークの課題について議論してきた厚生労働省は、この23日に、派遣社員や契約社員という理由だけでテレワークの対象外にしてはいけないという報告書をまとめました。

また、勤務の「中抜け」を事実上認めるなど、働き手がテレワークしやすくする方向性を打ち出す一方、長時間労働を防ぐための労働時間管理は引き続きしっかり行うよう、企業に求めています。

その他、メンタルヘルスや通勤手当なども検討課題として提言しています。

テレワークの指針を大幅に改定

この報告書は、労働法を専門とする大学教授ら8人が、働き手や企業への調査結果も踏まえて今年8月から議論した内容を基に厚労省が策定したもので、今年度内にテレワークの指針(ガイドライン)を大幅に改定する予定です。

緊急事態宣言が出された今年の春以降、正社員がテレワークを認められる一方、派遣社員や契約社員など非正規の働き手は出社せざるを得ない実態が広がりました。

この実態を受け、企業に対して正規・非正規の雇用形態を理由にテレワークの対象者を分類しないよう、留意を求めています。

長時間労働と「中抜け」への対応

同省はまた、テレワークは長時間労働になる懸念があることから、企業が働き手の労働時間の把握義務を果たすことの重要性を指摘しています。

その一方、働き手の仕事の状況を常時把握する手法は現実的ではないと判断し、働き手がそれぞれ自己申告した労働時間が実際と多少異なっていても、原則として企業は責任を問われない方向性を示しました。

これにより、働き手が宅配便の受け取りなどで仕事を「中抜け」した場合にも、始業と終業の時間をきちんと管理すれば問題ないとしました。

フランスの制度が下敷き

今回の制度改定は、フランスの「つながらない権利」を参考にしています。フランスでは、労働者がこの権利を行使し、雇用主に対して「連絡しないでほしい時間帯」を指定できます。

今回厚労省が示したガイドラインは、長時間労働を防ぐために制定した時間外や深夜・休日の電話やメールなどに一定のルールを設けたり、テレワークをせずに出社していることを理由に働き手を評価することを適切でないとしました。

また、通信代や機器代などテレワークで生じる費用の負担についても労使であらかじめルールを作ることを求めたことなど、フランスの制度を下敷きにしています。

メンタルへルスや通勤手当対策も

今回の提言書には、労働者に対する健康チェックも盛り込まれています。企業がテレワーク中の社員のメンタルヘルス対策を行えるよう、留意すべき事項をチェックリストなど分かりやすい形で示す必要があるとしています。

また、通勤手当を廃止してテレワーク手当の支給や交通費を実費精算に切り替える企業が増えていることを受け、社会保険料の算定基礎について明確化するよう求めています。

参照:厚労省ガイドライン