転勤は本当に必要? コロナ禍で制度を見直す企業も

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークの導入やオンライン商談・面談などが浸透しつつあります。

こうした状況下、従来のような転勤が必要なのか、疑問に感じる人も多くいます。

単身赴任は不要?

事例として、コロナ禍で一時的に単身赴任が解除された会社員の男性(38)は、妻と幼い子供を残して金沢に単身赴任中でした。

ところが、3月から在宅勤務を命じられ、愛知県の自宅からリモートワークとなりました。その後、仕事の効率が向上して業績も上がり、家族も円満になったといいます。

一方、会社として単身赴任制度そのものを見直すには至っていないため、いつまた金沢に戻ることになるが、不安な日々を過ごしています。

企業は転勤させ放題?

そもそも、企業は社員に対して自由に転勤命令を出しても良いのでしょうか。

転勤に関する過去の主要な判例から、下記のような「特段の事情」がない限り、企業が指示する転勤辞令に違法性を問うことは難しいようです。

  • 配転命令に業務上の必要性が存在しない場合
  • その他の不当な動機・目的をもって指示された場合
  • 労働者に著しい不利益を与える場合

病気の家族を介護・看護できなくなったり、自身の健康状態から無理が大きい場合などは、転勤を拒否できることもありますが、全てが違法無効となる状況ではありません。

転勤を見直す会社も多数

コロナ禍を契機として、社員の転勤や単身赴任制度を見直した企業もあります。いくつか具体的な事例を挙げてみます。

大手食品メーカーのカルビーは、昨年7月から、オフィス勤務者の約800人を対象としてテレワークを基本とした働き方を無期限で延長しました。また、テレワークで業務に支障がないと所属部門が認めた場合には、単身赴任を解除すると公式に発表しています。

IT大手の富士通も同時期に、テレワークと出張で業務への対応可能な社員については、随時単身赴任を解消し、将来的には社員の「ライフの充実も犠牲にしない世界を目指す」と公表しています。

旅行大手のJTBは昨年10月、転居を伴う異動が発令された場合でも、社員が生活の拠点として会社に登録している居住登録地でテレワークをベースに働く「ふるさとワーク制度」を導入しました。これにより、同社社員は単身赴任をせずに家族と過ごすことが可能になっています。

まとめ

コロナ禍でのテレワーク進展に伴い、社員の住居環境にも少しずつ変化が現れているようです。

昨年における東京から地方への転出者数は40万1,805人(前年比+4.7%)と、全国で唯一増加しました。

アフターコロナの時代を見据え、新しい働き方が定着すれば、今後さらに都市部からの転出者が増えていく可能性があります。

参照:弁護士ドットコムニュース