「起業教育」に力を入れる大学が増えているワケ

かつて長らく日本を支えた終身雇用と年功序列制度では、有名大学を出て大企業に就職するというのが王道でした。

ところが、ここ最近ではすっかり様変わりし、過去の遺物とすらいわれる状況となっています。

コロナ禍で状況は一変

文科省と厚労省が共同で実施した「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」によれば、2020年度における大学卒業予定者の就職内定率は89.5%と、前年同月比で2.8%下落しています。

多くの企業では、コロナ禍などによる業績悪化に伴い、ボーナスカットや人員削減、また早期退職者募集など、様々な対応に追われ、大手有名企業でも、ここ最近は社員に副業を認める動きを拡大させています。

こうした企業の動きは、社員の視野を広げたり、また他業種の人などとの交流が図れる一方、景気悪化によって将来の雇用情勢が不透明な状況下、社員にサバイバル能力を醸成させる意図も感じられます。

正規雇用であれば安全という考え方は、コロナ禍によって形骸化されつつあります。

景気に左右される非正規労働者

総務省が公表した「2020年度労働力調査」によれば、非正規の職員や従業員は前年度に比べて97万人減少しています。

これは、正規雇用の職員・従業員の数が前年度比で33万人増加していることを考えれば、コロナ禍によって非正規労働者の働き口が直撃されたことの証左でもあります。

一方、企業に守られているようにみえる正規雇用ですが、新型コロナウイルス感染拡大によって社会全体が大きく変化している状況下で、今後は正規雇用なら安全という見方は危険です。

景気や経済動向によってまず影響を蒙(こうむ)るのは、やはり非正規労働者となってしまいますが、今後は、コロナ禍で業績が急速に悪化し、雇用を維持する体力が企業側に残っていない場合には、正社員に対しても影響が出る可能性は否定できません。

会社の倒産や吸収合併が起きれば、職を失うリスクは正規雇用者でも同様に発生するでしょう。

起業家の育成に積極的な大学が増加

こうした深刻な就業・就労環境下にあって、起業家(アントレプレナー)育成に力を入れる大学が増えています。

将来自分が起業する・しないに関係なく、自分から何かを生み出す力や、リーダーシップ、またマネジメント能力などを育成するための取り組みです。いくつかの事例を挙げてみます。

  • 武蔵野大学では、2020年度から日本初のアントレプレナーシップ学部を設置しました。
  • 東京大学では、「東京大学アントレプレナー道場」を開講し、様々な分野で活躍中の起業家を講師に招き、学生に受講の機会を提供しています。
  • 文科省主催による「次世代アントレプレナー育成事業」では、早稲田大学を中心に、多摩美術大学東京理科大学が参加し、特徴が異なる大学同士の交流を通じて、新たな価値を発見する取り組みが行われています。 

それぞれの大学が、こうした取り組みを通じて学生に起業家精神を教えることで、既存の固定観念にとらわれず、国内外で新しい市場を作り出す人材を多く輩出することが期待されています。

まとめ

日本ではまだまだ諸外国に比べると起業件数が少なく、国際競争中で、新規事業の開拓に後れをとっている現状が懸念されています。

今回取り上げた大学機間の取り組みなどを通じ、将来のアントレプレナーを多数輩出し、経済を活性化することが期待されます。

参照:URBAN LIFE METRO