コロナ禍で拡大するテレワークですが、出社して仕事をするのと、自宅などでテレワークを実施するスタイルが混在する「まだらテレワーク」が、中小企業を中心に進展しているようです。
ところが、こうしたワークスタイルには問題点もあるようです。
東京の中小企業はテレワークが低下
東京商工会議所の調査によれば、23区内の中小企業ではテレワークが進んでいない状況が明らかになっています。
- 2021年5月の緊急事態宣言下でのテレワークの実施率は38.4%で、2021年1月~3月と比較して27.8ポイント減少
- 従業員301人以上は64.5%、50人以下は29.8%と、企業規模が小さいほどテレワーク実施率が低い
- すべての業種で前回調査より実施率が低下。特に卸売業では32.1ポイント減少と最大の下げ幅
その理由として、次の項目が挙げられています。
- テレワーク可能な業務がない(64.7%)
- 生産性が低下する(24.0%)
- PCや通信環境が整備されていない(19.6%)
- 取引先とのコミュニケーション不足(18.9%)
- 社内コミュニケーションが問題(15.4%)
まだらテレワークの問題点とは
事例として、テレワーク導入後に売上が回復し、出社した社員に業務が集中して残業が増えた企業があります。まだらテレワークの中で、出社組に業務が集中した事例です。
こうした事例から、残業時間の一部社員への偏在が、テレワーク開始以前には存在しなかったことが問題となっています。
まだらテレワークでストレス増加
ある民間企業の調査によれば、まだらテレワークの実施率は全体で約44%で、内訳は全社員出勤が49.9%、全社員テレワークが6.4%、その他の残りがまだらテレワークとなっています。
総務省が実施した『「まだらテレワーク」時代の企業と組織』調査で、テレワーカーの感じる不安・孤独感と、まだらテレワークの相関関係が指摘されています。
調査結果では、テレワーク率2~3割の企業で不安・孤独感を感じる指数がピークとなっています。
テレワーク率が増加するとともに同指数は低下し、テレワーク率6~10割の企業では指数は最低値になっています。
これを分析すると、テレワーカーが感じる「自分は情報・一体感・雑談等を得られていない」という気持ちが、出社者は得られているのではないかという心理が、テレワーク率2~3割の企業で最大化するとしています。
テレワークの成功はビジネス構造次第
総務省の分析によれば、日本型ビジネスの特徴として、強い水平的コーディネーションや、コーディネーション能力重視の評価を挙げています。
そして、日本でのテレワークの歴史が紹介されており、2008年の新型インフルエンザ、2011年の東日本大震災、そして2013年の世界最先端IT国家創造宣言時に、テレワークは一瞬流行って、その後廃れる状況を繰り返しています。
こうした過去の事例に加え、今回は大企業を中心に加速するジョブ型雇用の浸透がポイントとされています。
こうした状況とテレワークは相性が良いことから、今後の展望としては、テレワークのやり方を改善するのではなく、ビジネスの本質的な仕組みが根本的に変われば効果的という見方もあります。
参照:LIMO